「アートメイク=危険?」と感じるのはなぜか
朝、鏡を見たときに眉毛が整っている。
メイクなしでもアイラインやリップがきれいに見える。
そんな理想的な毎日を望んでアートメイクを選ぶ人が増えています。
SNSなどのネットにもそんなアートメイクの情報が満載ですよね。ビフォーからアフターへの写真も本当に美しく変身しているし、誰がみても美しい。私もやってみたいと思っているうちの一人です。
けれど、施術後に腫れが引かない、炎症が悪化する、目に傷がつく、などこうしたトラブルが日本各地で実際に起きているのも事実。
厚生労働省や国民生活センターには、無資格サロンで施術を受けた結果の相談が多数寄せられているのです。
アートメイクは確かに便利で魅力的な技術です。しかし、日本では法律上「医療行為」に分類され、医師や看護師以外が行うことはできません。
知らずにサロンで受けてしまえば、取り返しのつかないリスクを抱えることにもなりかねないのです。

アートメイクとは?眉・アイライン・リップで人気の理由
アートメイクは専用の針で皮膚の浅い部分に色素を入れる施術です。メイクをしたような仕上がりになり、数年は色が持続します。代表的なものとしては、以下の部位が人気です。
- 眉アートメイク:眉毛が薄い、左右差が気になる人に人気。
- アイラインアートメイク:毎日のアイラインが不要。汗やスポーツでも崩れない。にじまない。
- リップアートメイク:唇の色や輪郭を整え、自然な血色を保てる。

タトゥー(刺青)との違い
「針で色を入れる」という点ではタトゥー(刺青)と似ていますが、大きな違いがあります。
- タトゥー:皮膚の深い層に入れるため一生残る。
- アートメイク:浅い層に入れるため数年で薄くなり、やり直しも可能。
このためアートメイクは「半永久メイク」と呼ばれます。

日本では医療行為|厚生労働省が定めるルール
厚生労働省は令和5年7月の通知で、アートメイクは医療行為であると明記しています。医師免許を持たない者が業として行えば医師法違反ということですね。
施術できるのは、
・医師
・医師の指示を受けた看護師
この二つに限られています。
看護師でもサロンではNG
「看護師が施術しているなら安心」と思う方もいますが、それは誤解です。
看護師が施術できるのは 医師の指示のもと、医療機関でのみという制限があるのです。
エステや美容サロンで行われるアートメイクは、たとえ看護師が担当しても違法です。
大阪府堺市をはじめとする自治体も「医療機関以外での施術は危険」と公式に注意を呼びかけています。

実際に起きたトラブル事例
では実際に起きたトラブルの事例をちょっとまとめてみますね。国民生活センターからの報告になります。
- 化膿:無資格サロンで施術を受けた女性の眉が化膿。医師が「針や色素が原因」と診断。
- 角膜損傷:アイライン施術中に目に強い痛み。診察で角膜に傷が確認され、涙が止まらなくなった。
- 長引く腫れ:眉やアイラインで腫れが1週間以上続き、かさぶたがなかなか取れなかった。
- 不自然な色残り:刺青用の色素を使われ、意図しない色が消えず、修正も難しい。
- 左右非対称:眉のデザインがずれ、目尻のラインが二股になり修正できなかった。
厚労省や国民生活センターは、こうした被害を繰り返さないために「無資格サロンでは絶対に受けないように」と注意喚起しています。
海外のルールはどうなっている?
日本では医療行為ですが、海外では事情が異なります。
アメリカでは州ごとに規制があり、多くは「美容・ボディアート」として扱われ、専用ライセンスや衛生講習が必要です。FDA(米国食品医薬品局)は色素を「化粧品」として管理しています。また、ヨーロッパでは医療行為ではなく美容処置として扱われますが、EU化粧品規則やREACH規則により色素成分が厳格に規制され、有害物質は禁止されています。それから、オーストラリアでは医療行為ではなく、美容サロンでも可能ですが、保健当局が「皮膚に針を刺す行為」として登録や衛生管理を義務づけています。
最後に韓国では、日本と同じくアートメイクは医療行為に分類され、医師がいるクリニックでのみ合法とされています。ただし実態としてはサロンでも広く行われており、非医療者に国家資格を与える「タトゥーアーティスト法」が議論されるなど、制度改革の動きが進んでいます。

旅行先でアートメイクを受けるときの注意点
韓国をはじめ、美容目的で海外に行く人が増えています。旅行のついでにアートメイクを受ける方も少なくありませんが、注意点があります。
- 現地ルールの確認:韓国は公式にはクリニック限定。サロンは違法の可能性大。
- 無資格サロンのリスク:安さに惹かれると感染や失敗の危険が高まる。
言葉の壁:トラブル時に説明が理解できず、十分な対応を受けられない。 - アフターケアの困難:帰国後に腫れや炎症が出ても、日本では対応が難しいケースがある。
- 衛生基準の差:国や施設によって清潔管理に差があり、感染リスクが高い場合も。
安全にアートメイクを受けるためのチェックリスト
アートメイクを受けようと考えている方は、以下のチェックリストを参考にしてください。そして、最近では海外でプチ整形や美容医療など受ける方も多いようですのでアートメイクを海外で受けよう、と考えている方にもぜひ以下のチェックリストを参考にしてください。
✔︎日本では必ず「医療機関」で受けていますか?
✔︎施術者は「医師」または「医師の指示を受けた看護師」ですか?
✔︎リスクやアフターケアについて説明を受けましたか?
✔︎器具は使い捨てで衛生管理が徹底されていますか?
✔︎海外で受ける場合はライセンスや衛生基準を確認しましたか?

まとめ
アートメイクは眉・アイライン・リップに人気の施術ですが、日本では医療行為にあたり、医師や看護師が医療機関でのみ施術可能です。無資格サロンでの施術は違法であり、実際に化膿や角膜損傷といった被害が起きています。
海外では美容処置として扱われることが多く、ライセンス制度や成分規制で安全を確保しています。韓国は日本と同じく医療行為ですが、制度改革の議論が進んでいるのが特徴です。
「安いから」「旅行のついでに」と軽く考えず、必ず資格のある施術者と医療機関を選びましょう。安全と美しさを守る一番の方法です。そして自分の選択は自分の責任であるということも肝に銘じておいてください。
出典
- 厚生労働省「医師法第17条との関係について」令和5年7月通知
mhlw.go.jp - 厚生労働省「その美容医療、ちょっと待って!」
aesthetic-medicine-caution.mhlw.go.jp - 堺市「アートメイクによる危害に注意」
city.sakai.lg.jp - 国民生活センター報告(無資格サロン被害事例)
womenshealth-tokyo.com - 米国FDA「Tattoo Ink Safety」
fda.gov - 欧州委員会 JRC報告書(EU化粧品規則・REACH関連)
publications.jrc.ec.europa.eu - NSW Health(オーストラリア)「Skin penetration procedures」
health.nsw.gov.au - Korea JoongAng Daily「非医療者によるタトゥー合法化議論」
koreajoongangdaily.joins.com

